ひなたぼっこ

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高藤 裕(たかとう ひろし)。 17歳、高三。 彼もまた、同じ街に住んでいた。 いつも通り、放課後になってすぐ、まるで逃げ出すかのように帰宅した。 郊外の安アパートの一室。 一息つき、ぼんやりと考える。 ……もうすぐ冬休みか。 ……受験も、もう大詰めだな…。 …俺には関係ないな。 進学は、しない。 受験勉強の必要はない。 …だが、切羽詰っている周りの連中を見ると目を背けてきた現実の問題に、焦りを感じる。 …これから、どうしようか。 大学には行きたくない… かといって何かやりたい事もない。 それは殺風景な自分の部屋が嫌ほど示している。 部屋や本棚は性格を表すというが、まったくだ……。 なぜ俺にはそういったモノがないのか? 周りの連中にはあるのだろうか? いつもの様に答えの無い自問自答を繰り返す。 ……気が滅入ってきた。 (風呂でも入るか…) 湯を張った湯船に浸かり、また考える。 周りがどうかじゃない、俺がどうするかだ。 …何か思考が飛躍して、昔の事が浮かんだ。
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