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風がそよ吹くたびほんのりと広がる海の香り。
聞こえるのは、波が岩壁を叩き付ける音のみ。
右側には海と空が、その境目が分からないほど青く、混じり合っていた。
「すごいなー……」
坂道を上りながら、そんな美しく広大な自然にのんきにも驚嘆する拓也。
だがすぐにそんな思考を中断し、前方に向き直った。
(……落ちたら大変だ……。 今は歩くことだけに集中しよう)
そして拓也は俯き加減となり、歩み続ける。
――そう、一歩一歩、確実に近付いて行く。
彼の運命が変貌するその場所へ――……。
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