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「どうかしたかね?」
急に声をかけられビクッと一瞬身体が震えるも、拓也は引き攣った顔で振り返る。
すると、そこには修道服で身を包んでいる人物が立っていた。
修道服のため、顔が隠れて口元しか見えないが声からして男だろう。
そんな風貌のためか、不気味な雰囲気を纏っていた。
「いっ、いえ何も!」
あまり係わり合いたくないのか、拓也は慌てて両手を胸の前で振り、否定した。
男は拓也を一瞥すると。
「おや、珍しい方が来たものだ」
と、不敵に笑みを浮かべる。
拓也は男の言っている意味が分からず、怪訝そうな顔をする。
しかし男はそれを気にすることもなく、顎でチェック柄の扉を指して淡々と続ける。
「【栄清学園】へはこの扉から行くと良い。
それと――……」
すると、男は扉の近くにある棚に立てかけている竹刀を入れるような細長い袋を取り、差し出してきた。
「これを持って行け、きっと少年の力になってくれる」
「えっ、どうゆうことですか?」
拓也はそれをとりあえず受け取るがまだ戸惑っていた。
「苦しいとは思うが頑張れよ、少年」
男は拓也の問いに答えず、再び不敵に笑みを浮かべて言った。
「はぁ、はい」
首を傾げる拓也だが、とりあえず返事をし、扉の取っ手へと手を掛ける。
(ほんとにこんな扉で行けるのかな……?
ワープじゃあるまいし……)
そうして――まだ半信半疑の拓也は、"ギィー"と扉が開く音と共に中へと入って行った。
その後、男は再び不敵な笑みを浮かべいた。
「さて、あの少年はいつまで持つかな」
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