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メイドはため息をついた。 トウヤに見せていた優しい微笑みと違い、その表情は硬かった。 彼女はすっと懐に手を入れ四角い物を出した。 掌サイズのそれは見た目カメラのようだ。 しかしカメラではない。 高性能通信機だ。 メイドは赤い通信ボタンを押した。 「ゼロ様終わりました」 《ザッ――ご苦労だった。サー》 サーと呼ばれたメイドは、ゼロに事務的に事を話した。 《つまり、明らかに王子の様子がおかしいんだな?》 「そうです」 少し間を置いて、ゼロは言った。 《分かった。お前は引き続き監視を続けろ》 「御意」 ――――――― ―――― 「駄目ですよ……王子」 謎の人物は通信機を片手に怪しく笑った。 ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた――――…
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