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「はぁ…」 誰もいない部屋で、トウヤは一人ため息をついていた。 部屋に唯一ある小さな窓は開けられている。 トウヤは、カノンの事を一時間前からずっと待っていた。 「遅いな…カノン」 春の暖かな風がトウヤの銀色の髪を撫でる。 「やっぱり窓からじゃないか……」 …トウヤは窓からカノンが入ってくると思っていたようだ。 「はぁ…何か俺さっきからため息ばっかついてるし……」 トウヤは窓を閉めると側にあった椅子に座った。 そして机に置いてあったオーディオの電源をONにした。 [ザッ…♪~♪~~~♪~] 鈍い機械音の後に、美しい旋律が混じる。 トウヤが好きな歌姫の歌だ。 彼は小さな頃から歌が下手な母親の替わりに、子守歌として聞いていた。 [~♪~~~~♪~♪] 美しい旋律を聞いているうちに、トウヤは深い眠りについてしまった――…
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