秘密の鍵

10/38
前へ
/189ページ
次へ
「はぁ…」                                         誰もいない部屋で、トウヤは一人ため息をついていた。                    部屋に唯一ある小さな窓は開けられている。                                                       トウヤは、カノンの事を一時間前からずっと待っていた。                                  「遅いな…カノン」                                                    春の暖かな風がトウヤの銀色の髪を撫でる。                         「やっぱり窓からじゃないか……」                                             …トウヤは窓からカノンが入ってくると思っていたようだ。                                 「はぁ…何か俺さっきからため息ばっかついてるし……」                                  トウヤは窓を閉めると側にあった椅子に座った。                                      そして机に置いてあったオーディオの電源をONにした。                                                  [ザッ…♪~♪~~~♪~]                                                              鈍い機械音の後に、美しい旋律が混じる。                          トウヤが好きな歌姫の歌だ。                                彼は小さな頃から歌が下手な母親の替わりに、子守歌として聞いていた。                                                                        [~♪~~~~♪~♪]                   美しい旋律を聞いているうちに、トウヤは深い眠りについてしまった――…
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加