前半

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母親が風呂から出てきた。 「あらあなた、お帰りなさい。お風呂あるわよ。あっくんが入れてくれたのよ」 「そうか。じゃあ俺も入ろうかな。アキヨシ、これはちゃんとしまっておけよ」 父親はそう言って風呂に行った。水風呂だけれど。 「なんだこれ。冷たいじゃないか」 風呂場からの父親の声。 「冷たいと思ったら冷たいわよ。熱いと思えば大丈夫よ」 母親の言葉。 「わけわからんよ」 そんな父親の返事に微笑む母親。姉だけが怖い顔をしていた。 父親はすぐに風呂から出てきた。 「リコ、水風呂に入ったのか?」 「入ったわよ。あっくんが入れてくれたから」 「風邪ひくなよ」 父親はそう言った。 姉の料理はおいしい。共働きの両親で、アキヨシのお世話はもっぱら姉の仕事だった。料理を作るのも姉の仕事だ。 ビールを飲みながら父親が言った。 「おねいちゃん、いつも悪いね。遊びたい時期だろうけどアキヨシのこと見ててくれよ」 「見てるわよ。このイタズラっ子」 姉は怒っている。 「今日も庭にクギなんか打ってさ。地球温暖化とかいって芝生にクギなんか打って何になるのよ」 姉は言ってるうちに可笑しくなったようで、「バカな弟持ってホント飽きないわよ」 と言って、笑顔になった。
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