前半

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わかっている。 わかっているけど、イタズラはやめられない。 イタズラほどおもしろいことはない。 パイナップルの髪型に興味を持ったのは、その翌日のことだった。 「いかしてんじゃん。コイツのヘアースタイルいかしてんじゃん」 気取った父親の言い回しが気に入って、アキヨシはパイナップルが好きになった。 「いかしてんじゃん」を連呼した。保育園の友達もアキヨシの真似をして「いかしてんじゃん」と言うようになった。 数日後、アキヨシの両親は保育園に呼ばれた。 「子供に変なことを教えないでください」 アキヨシは「いかしてんじゃん」の言葉を使って、とんでもないイタズラをした。 保育園の壁や床にパイナップルのヘアースタイルを書きまくったのだ。 それがクレヨンとか絵の具だったら、かわいげがある。 よりによって油性のマジックで書いてしまったのだ。 「いかしてんじゃん。このパイナップルヘアーいかしてんじゃん」 しかも集団で。子供の団結力はこういうときに発揮されてしまう。 アキヨシの両親は保育士と一緒に、専用の溶剤を使って、休日返上でパイナップルヘアーを消さなければいけなかった。
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