前半

8/78
前へ
/164ページ
次へ
「アキヨシよ、今回ばかりは参ったよ」 保育園から帰ってきた父親が言った。 「何もマジックで書くことはないじゃないか」 「何かあったの?」 何も知らないのは姉だけだった。 「あっくんが保育園の壁とか床に落書きをしたんだよ。なかなか消えないしろものでね」 「なんだ、そんなことかぁ」 姉は平然としている。 「ってことは、あっくんはウチでも何かしでかしたのか?」 「べつに…」 姉は言えなかった。 アキヨシは姉の下着を電子レンジでチンしたのだ。 焦げた下着を姉は隠して、家中の換気をした。 アキヨシのお尻を真っ赤になるほど叩いたのに、それでもまだ怒っているのだ。 アキヨシは疑問に思ったことを実験してみただけだった。姉の下着を電子レンジでチンしたらどうなるのか? 熱くなって溶けるのか。それとも卵みたいに爆発するのか。 これは子供の好奇心なのだ。悪いことではないけれど、実験の結果は、姉の下着は煙を出して、焦げたということになる。 そしてアキヨシは姉にお尻を叩かれた。 「あっくん、危ないでしょ!火事になったらどうするのよ」 姉は何度も怒鳴りながら、アキヨシを叱った。 アキヨシは二度としないことを約束させられた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加