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「風矢…。」
霞が心配そうに俺に近寄ってくる。
「風矢…泣いてるの…?」
「え?」
気がつけば涙が流れ出していた。ポロポロと止めどなく。
「はは…。バカ、泣いてなんかないぞ。」
手の甲で必死にそれを拭うが、涙は一向に止まりはしなかった。
どうして俺は泣いてるのだろうか。自分でも確かではないが、きっと今『生きてる』と言う喜びが俺をそうさせたのだろう。
「風矢…大丈夫…?」
「おう!心配はいらねぇぞ。大丈夫だ。」
「うん…。」
この島は平和だ。争いなんて起こらない。自由気ままに生きていられる。
「ちょっと…散歩してくるよ…。」
俺はそう言って小屋を出た。
すっかり暗くなってきた外の景色。向かう先なんて限られている。
俺は川の横に座った。靴を脱ぎ、足を川の中に浸す。
(冷たい…。)
やけに冷たい水。一体この水はどこから流れてきてるのだろう。
でも今はそんな事どうだっていい。ただ泣きたい。流れる涙を今は止めたくないと思った。
この涙はまた俺を少しだけ強くする礎となる。だからこのままでいい。時の流れに任せるのもいいかもしれない。
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