5章 変わらぬ志

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「風矢…。」 霞が心配そうに俺に近寄ってくる。 「風矢…泣いてるの…?」 「え?」 気がつけば涙が流れ出していた。ポロポロと止めどなく。 「はは…。バカ、泣いてなんかないぞ。」 手の甲で必死にそれを拭うが、涙は一向に止まりはしなかった。 どうして俺は泣いてるのだろうか。自分でも確かではないが、きっと今『生きてる』と言う喜びが俺をそうさせたのだろう。 「風矢…大丈夫…?」 「おう!心配はいらねぇぞ。大丈夫だ。」 「うん…。」 この島は平和だ。争いなんて起こらない。自由気ままに生きていられる。 「ちょっと…散歩してくるよ…。」 俺はそう言って小屋を出た。 すっかり暗くなってきた外の景色。向かう先なんて限られている。 俺は川の横に座った。靴を脱ぎ、足を川の中に浸す。 (冷たい…。) やけに冷たい水。一体この水はどこから流れてきてるのだろう。 でも今はそんな事どうだっていい。ただ泣きたい。流れる涙を今は止めたくないと思った。 この涙はまた俺を少しだけ強くする礎となる。だからこのままでいい。時の流れに任せるのもいいかもしれない。
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