3444人が本棚に入れています
本棚に追加
/385ページ
とうとうこの島で二度目の夜を迎えようとしていた。
周りの景色は漆黒の闇に覆われ始め、視界が急激に悪くなる。
麗が小屋の隅につけてあるランプに火をともす。オレンジ色の炎が小屋を仄かに明るく照らし出した。
「なんか…いいなぁ。癒されるなぁ。」
何故か哲さんはランプに異常な興味を示している。
俺は後二日ほどしか保たないであろう缶詰を一つ手に取る。
「みんな、そろそろ夕飯にしよっか。」
まだ時間は早いが、俺の腹時計はすでに午後八時くらいだ。
空腹に慣れていないからだろう。
「うん。私もお腹すいた~。」
「そうね。そうしましょう。」
食事は缶詰一つに水。確実に物足りない。まだ食糧があっただけで喜ぶべきだろう。
人は不思議と一つの物を手に入れると、さらにその先も手に入れたくなる。人の性だ。
開いた缶詰の中身は『焼き鳥』だ。それをつまむはしなんかない。俺はそれにむしゃぶりついた。
空腹の時はなんでもうまく感じるというが、それが今身に染みてよくわかる。
「うまい…うまいなぁ…。」
俺はそれを一口一口噛みしめた。今まで食べ物をこれほどうまいと感じた事があっただろうか。
最初のコメントを投稿しよう!