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━━━風矢が出ていった後の小屋の中、私たちは黙々と夕飯を頬張っていた。
風矢のことはしばらくそっとしてあげようということになったのだ。
いち早く私は缶詰を食べ終え席を立つ。
「志保?どこ行くの?」
隣で食べていた麗が心配そうな顔をして聞いてくる。
「うん、ちょっとね。大丈夫、心配しないで。」
私は小屋を後にした。
周りを見て、風矢の姿を探す。見える範囲には風矢の姿は見当たらない。
軽い駆け足で川の流れている所へ行く。上流下流を見てみても、そこにもやはり目的の人物は見当たらない。
「どこ行っちゃったの…?」
胸に手を当てる。
ドクンドクンと、いつもより早く心臓が動いているのがよくわかる。
この胸の高鳴りは何なんだろう。今まで一度としてこんな気持ちを感じたことはなかったのに。
男なんて興味なかったはずなのに。
どうして風矢の事が頭から離れないんだろう。
私はその場から走る。大樹の方へ向かって。
すぐにたどり着いた大樹、その周りをくまなく探す。だけど見つからない。
私は諦める気にはならなかった。
そばにいたいって思えるから。
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