15人が本棚に入れています
本棚に追加
瀬崎 優奈(せざき ゆな)の場合
彼女は、自らこの『闇』へと来る事を望んだ。
無論、最初からそうだったと、いうわけではない。 初めてここへ招かれた時は、やはり夢だと思った。 同時に、恐いとも思った。
だが、これは夢ではないと、『声』が教えてくれた。
その存在と、在り方も。 『声』と、何度か会話を交すうち、優奈はいつの間にかこの『闇』へと来る事を、『声』と話をする事を望むようになった。
空間全体が、優奈に気付いたように一瞬ざわめく。 そして-
「あんた、また来たの?」
呆れたような口調。
優奈はくすりと微笑んで、かまわず話し始めた。
「また、お話したくて。」
『声』は、溜め息に言葉をのせた。
「ここは、雑談室じゃないの。教えたはずでしょ?私がどういう存在か。あんたが見てるもの、聞いてること、考えてること、全部こっちにはつつ抜けなんだから、わざわざここへこなくても」
「でも、貴方の声は『ここ』へ来ないと聞こえないでしょ。」
やれやれ-と。
「聞こえるようにしてほしい?普通に私と会話して、『独り言呟いてるアブナイ人』とかに思われたい?」
言われて、優奈はさすがにちょっと考えて-
「それはちょっと抵抗あるかも・・・で、でもだからここへ来てるわけだし・・・」
「・・・まぁいいわ。で?今日は何を話したいの?」 「うん。あのね・・・・」 かくて-何も無い『闇』の中での、座談会がはじまった。
-4へ-
最初のコメントを投稿しよう!