序章:-3

2/2
前へ
/55ページ
次へ
瀬崎 優奈(せざき ゆな)の場合 彼女は、自らこの『闇』へと来る事を望んだ。 無論、最初からそうだったと、いうわけではない。 初めてここへ招かれた時は、やはり夢だと思った。 同時に、恐いとも思った。 だが、これは夢ではないと、『声』が教えてくれた。 その存在と、在り方も。 『声』と、何度か会話を交すうち、優奈はいつの間にかこの『闇』へと来る事を、『声』と話をする事を望むようになった。 空間全体が、優奈に気付いたように一瞬ざわめく。 そして- 「あんた、また来たの?」 呆れたような口調。 優奈はくすりと微笑んで、かまわず話し始めた。 「また、お話したくて。」 『声』は、溜め息に言葉をのせた。 「ここは、雑談室じゃないの。教えたはずでしょ?私がどういう存在か。あんたが見てるもの、聞いてること、考えてること、全部こっちにはつつ抜けなんだから、わざわざここへこなくても」 「でも、貴方の声は『ここ』へ来ないと聞こえないでしょ。」 やれやれ-と。 「聞こえるようにしてほしい?普通に私と会話して、『独り言呟いてるアブナイ人』とかに思われたい?」 言われて、優奈はさすがにちょっと考えて- 「それはちょっと抵抗あるかも・・・で、でもだからここへ来てるわけだし・・・」 「・・・まぁいいわ。で?今日は何を話したいの?」 「うん。あのね・・・・」 かくて-何も無い『闇』の中での、座談会がはじまった。 -4へ-
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加