第一章…誕生と時代背景

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西暦1162年の事… 黒竜江はその上流で、オノン、ケレルンの二つの支流に別れるが… その流域の草原地帯や森林地帯に居住する遊牧民、モンゴル部族の族長のパオに一人の男児が生まれた。 産婦はホエルンと言い、まだ20代前半の美しい女性だった。 彼女が出産した時、この部族の男達は…犬猿の仲である他部族のタタール族との戦闘の為に出払っていた。 なので、集落の何百というパオに居るのは… 老人と女子供ばかりだった。 ホエルンは、男児の誕生を集落から十里程離れた戦場に居る…族長である夫、エスガイに教える為に、一人の老いた下僕を使者に送った。 ホエルンは夫に知らせを送った後… 自分の腹から出たばかりの、猿にも似た嬰児の顔をまじまじと見つめた。 嬰児の左手は何故か固く握りしめられており… ホエルンはその左手を開かせたいと思った。 生まれた子の身体に何か障害がないか…確かめる為である。 ※パオとは機密性の高いテント式の住居、場所によってはゲルとも言います。
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