第一章…誕生と時代背景

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その行為は少しの粗暴さも許されぬ… 非常に繊細な注意を必要とする作業だった。 母になったばかりのホエルンは、二つの事に心を痛めていた。 一つは自分が産んだ嬰児が、夫エスガイを充分に満足させる完全な身体を持っているかどうかということ。 ホエルンが執拗に、嬰児の握りしめた手のひらを開かせようとしてるのは… その懸念があるためであった。 そしてもう一つは…嬰児が夫エスガイを充分に納得させるように… 彼に似た目鼻立ちを持っているかどうか? ということであった。 しかし、この二つの心配事のうちの一つは、やがてホエルンの心から取り除かれる事ができた。 嬰児は母親の手の中で、その握りしめた己れの小さい手指を開いて見せたのである。 嬰児は碑石の形をした血の塊を… 大事な物であるかのように、しっかりと握りしめていたのであった。 ※碑石(ひせき) 鹿の骨を削って作った玉、当時の子供の遊び道具。
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