花札

12/34
前へ
/1354ページ
次へ
言ってる途中に相澤さんがニヤリと笑う姿が目に映り、急に冷静になった。 ハッとして俯いていたら、相澤さんが俺に近付き肩に手を置いたんだ。 まるで、慰められているような格好だ。 「ふっ、やっぱり君だったんだね~。ペラペラと喋ってくれちゃって、いい奴じゃん。それに、こんな事でムキになるとは単純な野郎だな~。」 「いや、えっと…その。」 苦しい弁解をしようとしたが、もう遅い!という言葉が頭の中で響き、口を尖らせた。 「学校にはバラさないからさ。そうだ、名前教えてくんない?何か俺達、仲良くなれそうじゃん!」 「…はい。」 渋々携帯を鞄から出して顔を上げたら、不安そうに俺を見つめる堺さんの顔が目に入り、視線を相澤さんに戻した。 弱味、握られた。 彫りものを入れる前に最も恐れていた事が、現実に起きてしまった。 面白くなってきたー、と言わんばかりにニヤニヤしている矢口さんが視界の隅に入り、誰にも聞こえないぐらいの小さい舌打ちを打った。
/1354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2753人が本棚に入れています
本棚に追加