2753人が本棚に入れています
本棚に追加
筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出し、紙に向かって書こうとしたら、イメージに混じって長崎さんの顔が浮かんだんだ。
一応、伝えておいた方がいいか。
椅子から降りて、床に転がっていた携帯を掴み、発信をした。
「もしもし。」
「お仕事中、すいません。写真集の衣装とかって、俺が提案とかしちゃったりしたら、マズイですかね?調子こいてるって思われたりとか、」
聞いておきながら、心の中でひたすら同意を求めた。うん、良いと思うよ。っていう、あの優しい声で。
「ははは、そんな事ないよ!むしろ、やる気があって好印象なんじゃないかな。」
「本当ですか?あっ!あと、お願いがありまして『キャロル』のチケットなんですけど二枚頂けないですかね?できれば前の方で。」
「わかった!任せてよ!」
長崎さんの頼りがいのある明朗な声を聞いていたら、嬉しくなった。
本当に良い編集者に恵まれたな。
通話を終えて、携帯をベッドに投げ捨てたら、執筆意欲が湧き、シャーペンが踊るように動いていった。
最初のコメントを投稿しよう!