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『可能性が0%というのはまず有り得ない』
草原に腰を下ろしながら、端正な顔立ちの少年はそう言った。
私はその姿を見て、何故か彼が消えてしまいそうな予感がする。
ゆっくりその予感を吐き出すように息をはき、私は彼の隣に座った。
視線を上げると、遥か昔に行った、プラネタリウムで見たものに似た星達が輝いている。
『例え可能性が0.00001%でも、可能性はあると言える』
彼はその深海を連想させる青眼に、たくさんの星達を持っていた。
きらきら光るそれに私は美しさのあまり何も言えず、ただ彼の瞳を見ているだけで。
『だから、諦めるな。可能性は限りなく0に近くても、0じゃない』
彼は先程までの険しい顔を崩し、笑みをうかべた。
私まで悲しくなるような、悲しい笑みを。
『さぁ、お別れだ』
そう言った途端、闇に包まれていた草原が少しずつ明るくなってきた。
――夜明けだ。
彼は立ち上がり、太陽が地平線から顔を出すのを眺めた。
太陽の強すぎる光は美しい星を隠し、月を追い出し、彼を消す。
『もうお前と会うことはないだろう』
太陽の光を浴びて透け始めた彼は、私に終わりを告げた。
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