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私はもう会えなくなるというその言葉を聞き、体を震わせた。
嫌だと泣き叫んで、彼に縋ることが出来たらどれだけ楽になるだろうか。
でも、彼にはどうしようもない事。私は彼を困らせたくない。
溢れそうになる涙を、私は必死で止めた。
『でも、大丈夫だ。俺はいつでもお前のそばにいる』
彼はそう言い、笑った。
今度は嬉しそうな笑顔で。
『お前を愛してるから』
終わりが来る事は初めから覚悟していたのに、泣いては駄目だとあれほど我慢したのに。
涙がポタポタと草原に落ちていった。
『これから、新しく好きな人も出来るだろう。その時は俺のことなんて気にするな――お前の幸せが、俺の望みだ』
太陽は少しずつ空へいこうと、地平線から這うように昇る。
それに伴って私の意識は沈んでいく。
『いいか、これだけは絶対忘れるな』
彼の姿が霞む。
手を伸ばしても届かない。
『可能性は』
「ゼロじゃない」
私はそう言って、微笑んだ。
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