見慣れた町の見慣れぬ人たち

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全員を起こし終わった後、物音が聞こえた。 食器をかちゃかちゃと扱う音ではない。 こつ、こつ こつ、こつ 私たちは反射的にドアに駆け寄った。 シリンダー錠を横に滑らせかちゃりと鍵をしめる。 その予想以上の大きな音に全員の肩が少し揺れる。 ガチャガチャとドアノブをひねる音。 息を潜め[音]が去るのを待った。 割れている四角い擦りガラスの隙間から中を覗いているのが気配でわかる。 キャンドルは消えているから気付かれる事はまず無いと思う。 やがて小さい息を吐き、[音]は部屋から離れる。 目を合わせば不思議と意思が通じ合い、アリスと私が隙間から廊下を覗いた。 アリス「!!」 街で追ってきた…男。 他の部屋も同じようにガチャガチャとドアノブをまわした。全ての部屋も鍵が開いていない。 ため息を吐き捨てて男は階段へと歩を進める。 私たちは安心して部屋へと視線を移した。 みんなで安堵の息をついたのも束の間…… .
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