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美鈴の声と共に、連撃は続いていく。
繰り出し、防がれる。
怖くはないのだろうか。
剣道は、防具を付けて試合をするため、ある程度は痛みも和らぐだろう。
ただ、防具もなにもない今は、竹刀が当たってしまえばそれだけで致命傷。
大袈裟かもしれないが、そう考えさせるほど、この戦いは凄まじかった。
面を繰り出し、防がれ。
胴を狙い、防がれ。
幾度もフェイントをかけ、何度も何度も攻撃を放つが、それでも美鈴の刃は彼に届かない。
ふと、男性が美鈴に向けて何かを呟く。
ここからは遠すぎて聞こえない。
だが、美鈴の様子はそれで一変した。
勢い良く後ろに飛び、一瞬のうちに男性との距離をとる。
そして、竹刀の切っ先を真っ直ぐ彼へと向ける。
言いようもないほどのプレッシャー。
おそらく、ここは俺なんかがいていい場所じゃなかった。
だが、それでも男性は動かない。
ただそこにいるのが当然のように、一瞬たりとも揺るがない。
そして、そんな中美鈴は動いた。
「十六夜ッ!!」
瞬間、美鈴の姿が消える。
消えたように見えるほど速く、男性に向かって切りかかる。
初速から最高速。
おおよそ常識では計りきれないような、そんな速度で剣撃を繰り出す。
これならば。
そう思った瞬間、美鈴の竹刀は宙を舞っていた。
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