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幼少期の事象は、覚えてないにしろ本人にとって大切な思い出となる。
母親に頭を撫でられたこと。
父親とキャッチボールをしたこと。
その一瞬一瞬を生きている瞬間には、ただ嬉しい、楽しいと思うだけだろう。
だけど、その思い出は確実に本人の糧となっている。
その思い出に長い年月を掛けて育てられた人物は、純粋で……愛らしくて、誰にでも愛される人物になる……場合もある。
もちろん何事にも例外はある。確実にその条件を満たせばそんな人格が形成されるわけじゃない。
でも、そんな例外へ進んでいかなかった人物が、俺の妹の三間坂有希だ。
有希は母親に愛され、父親にも同じように愛され、みんなから愛される人物へと成長した。
当然俺も妹のことは大好きだ。家族として、本当に愛している。
何故なら……有希だけは俺を本気で愛してくれるから……。
俺は……幼少期に良く母さんに怒られた。
理由は、多分有希を何度も泣かせていたからだ。
もちろん、俺が有希に意地悪をしたわけじゃない。
もう過去のことだからはっきり断言できるわけじゃないが、俺が小学校に入学して少したってから、有希は俺依存症のような状態になった。
小学校から帰ってくれば真っ先に俺にしがみつき、一日中俺にくっついて回っていた。
俺が少しでも離れようとすれば大声で泣き叫び、そのたびに有希を愛している母さんは俺のことを罵倒し、酷いときは打つこともあった。
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