遥か彼方

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最近美鈴の部屋に遊びに行く時に抱いた疑問。 厳密に言えば、それは最初から不可解だった。 いつ来ても一人。 あの屋敷に、ただ一人。 聞いてはいけない気がした。 踏み込んでは行けない領域。 それは誰にでもあって、自由に侵害していいものじゃない。 美鈴にとって、それに該当するのが、“家族”なんだろう。 美鈴は質問すればきっと答えてくれる。 でも、それは美鈴から話してくれるのを待つべきだと、その時は直感した。 まぁ、それはひとまず置いておく。 放課後になった瞬間、俺は教室を飛び出した。 幸い今日は生徒会活動がない。 美鈴のお見舞いだ。 学校から美鈴の家までは、結構距離がある。 美鈴の家は神城市の栄えている辺りから少し外れた場所にあるからな。 神城市の神流木家といえば地元では結構有名で、わざわざ見に来る人もいるらしい。 まぁ、あの庭とか道場とかを見ればその気持ちも分からなくない。 それに、なにより美鈴自身が凄い。 武術においては右に出るものがいないと言われるほどに様々な大会で活躍している。 まぁ、本人曰わく、広く浅く習得しているため、本気で一つを極めた人には絶対にかなわないそうだ。 でも、美鈴なら大丈夫だろう。 一番側で見ているんだから。 素直にそう思える。 ……話がそれすぎた。
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