遥か彼方

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くるくると空中で回り、竹刀は上昇していく。 美鈴は、時が止まったかのようにその場に立ち尽くしている。 そして、自然の摂理に従い、竹刀は道場の床に叩きつけられる。 竹刀特有のあの音が何度も響く。 その音が耳に入る度、実感する。 美鈴は今、負けてしまったのだと。 どんな理由で戦っていたのかは分からない。 だが、今の美鈴の姿は、敗北を連想させるには充分だった。 「っ……!!」 竹刀が完全に止まった瞬間、美鈴は力なく膝から崩れていった。 「美鈴っ!!」 思わず駆けだしていた。 おおよそここに存在してはいけない存在である俺が、それを考えずに。 ただ無意識に、反射的に体は動いた。 「悠太……?」 駆け寄って肩に手を置き、美鈴の無事を確認する。 そりゃそうか。 何しろ、美鈴は俺が見ていた限り一発も有効打をもらっていない。 だからこそ、美鈴のダメージは大きいのだろう。 美鈴の無事を確認した後、俺は男性を見上げた。 真正面から見ると、遠くで見ていたときの印象とは違ってくる。 その男性は、思ったよりも若くはない。 だが、体の造りを見るだけで、他の人となにが違うのかが一目瞭然だった。 そして何より、その眼。 深い。 そう表現するのが一番正しい。 どうしたらそのような眼ができるのか。 想像もつかない。 それが怖いと感じた。
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