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沈黙の空気が流れる。
あまり居心地が良いとは言えない。
それはそうだ。
だって、少なくとも、美鈴にとって快くないことを聞いているんだから。
また同じ空気が流れる。
この空気に耐えられないと、喉が騒ぐ。
何か言葉をと求める。
でも、それはダメだ。
「……すまないな。何から話せばいいのか分からなかったんだ」
沈黙を破ったのは美鈴。
提案に肯定的な印象を覚えるその言葉に、ひとまず安堵する。
「話してくれるなら、ちゃんと全部聞く。だから、ゆっくりで良いよ」
俺の仕事は美鈴の話を聞いて、その上でどうするべきか判断すること。
もう、時間なんて気にしていられなかった。
「うん、ありがとう。
……別に、隠していたわけじゃないんだ。ただ、言い出すタイミングが分からなかった。
私の家庭の話、私の家系の話、そして、この神城市と神流木の関係……」
それは、本当に聞いて良かったのだろうか。
聞かなければ、これまで通りの幸せな日常が待っていたんじゃないか。
そう想う。
だけど、今の俺には何も分からない。
何が間違いかは、一瞬一瞬に生きる俺たちには、ひょっとしたら分からないのかもしれない。
でも、この時俺は選んだ。
それが、全ての出会いの始まりであり、また混乱の原因となるともしらずに。
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