119131人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
私は、孤独だった。
母の神流木椿は、私が小さいときに死別した。
その日から、父の神流木祐正は変わった。
剣術を教えに遠くへ行き、とある日は演説、とある日はテレビの取材と、家にいる時間はなくなっていく。
まだ何も分からない私を残して。
それが孤独と理解したのは、小学校の高学年に進級してからだ。
授業参観では、クラスメイトの親御さんが優しく微笑みながら我が子を見ている。
でも、当然ながら私の父さんの姿はない。
気がつけば、身の回りのことは全て自分でできるようになっていた。
誰にも頼らずに、最低限の生活を送ることができるくらいに成長していた。
非現実的だが、生きてこられた。
役所の人が何度も訪ねてきたが、抜かりのない父さんは、そこにもきちんと対応していたようだ。
だから、神流木家を出て行くことはなかった。
神流木の剣術を習う門下生とも毎日戦った。
あらゆる武術を叩き込まれた。
たまに会う父さんとは、戦っている記憶しかない。
とても少女らしい生き方をしてきたとは言えない。
そのうち、門下生では練習にもならなくなってきた。
皆が言う青春とはかけ離れた場所に私はいた。
元来、神流木家はこの町、神城市の神様の守護を勤めてきた。
神というものが曖昧になった今でも、その傾向にある。
それを裏付けるのが、真打・十六夜だ。
最初のコメントを投稿しよう!