遥か彼方

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 ◆ 私は、孤独だった。 母の神流木椿は、私が小さいときに死別した。 その日から、父の神流木祐正は変わった。 剣術を教えに遠くへ行き、とある日は演説、とある日はテレビの取材と、家にいる時間はなくなっていく。 まだ何も分からない私を残して。 それが孤独と理解したのは、小学校の高学年に進級してからだ。 授業参観では、クラスメイトの親御さんが優しく微笑みながら我が子を見ている。 でも、当然ながら私の父さんの姿はない。 気がつけば、身の回りのことは全て自分でできるようになっていた。 誰にも頼らずに、最低限の生活を送ることができるくらいに成長していた。 非現実的だが、生きてこられた。 役所の人が何度も訪ねてきたが、抜かりのない父さんは、そこにもきちんと対応していたようだ。 だから、神流木家を出て行くことはなかった。 神流木の剣術を習う門下生とも毎日戦った。 あらゆる武術を叩き込まれた。 たまに会う父さんとは、戦っている記憶しかない。 とても少女らしい生き方をしてきたとは言えない。 そのうち、門下生では練習にもならなくなってきた。 皆が言う青春とはかけ離れた場所に私はいた。 元来、神流木家はこの町、神城市の神様の守護を勤めてきた。 神というものが曖昧になった今でも、その傾向にある。 それを裏付けるのが、真打・十六夜だ。
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