狼の噂

7/7

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「…何?」 「ほんとに、姉貴に似てるよ。」 あたしはその言葉に心臓が大きく脈打ったのを感じた。 「似てること、お前気にしてたじゃん。でもさ…その顔は姉貴のじゃなくてお前のでもあるんだよ。姉貴がキレイだからお前もキレイなんじゃない。薫が、キレイなんだよ…」 蓮はあたしを抱きしめた。 「…こんなキレイな彼女の目の前に、松下みたいな狼が現れると思うと…心配になるに決まってんじゃん…」 細いのに筋肉質で、すらっと高い身長。 フワフワした茶色い髪が、少し垂れかかる広い背中。 あたしにしがみつくように抱きつく蓮が、愛おしい。 あたしのコンプレックスを、こんな風に思ってくれる蓮が愛おしい。 あたしは、夕日が沈む紅い空の下、蓮の広い背中に手をまわした。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加