空蝉

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「菫ー?」 …やば! お母さんが階段をあがってくる音がした。 あたしはばさばさと教科書を広げて机に向かった。 「…あら、また薫は帰ってないの?」 「う、うん。」 「まったく、あの子ときたら…菫を見習ってほしいわ。」 あたしは苦しく笑って見せた。 「菫、勉強がんばってね。」 お母さんはあたしの頭を撫でて部屋を出て行った。 菫の言うとおりだった。 あたしがいなくても大丈夫。 いないのが菫だとわかったら? …警察沙汰になるんだろうな。 「…」 あたしは机に突っ伏した。
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