空蝉

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その頃の菫は… 「いらっしゃいませ。お隣失礼いたします。」 「こんばんわ。」 「松下先生、お待ちしておりました。」 松下のグラスに酒を注ぐ菫。 「今日もお忙しかったみたいですね。」 「わかる?」 グラスを口に流し込む松下。 テーブルにグラスを置くと、菫の肩を抱いてとろんとした瞳で見つめた。 「疲れてるせいかな…もう酔っちゃったや。」 「先生…」 「薫ちゃん、ほんとにかわいいね。酔ってても薫ちゃんだけはちゃんと見える。」 菫は嬉しそうに微笑む。 「薫さん…」 黒服が菫を呼んだ。 「…先生、失礼します。すぐに戻りますからね。」 菫が立ち上がると、松下は菫の手を掴んだ。 「…すぐきてね?」 上目つかいで菫を見つめる。 菫は尾を引くような気持ちで精一杯微笑んでテーブルをあとにした。
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