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中学の時は菫と間違って声かけられたりしたけど、今じゃ間違うどころが声もかけられないから楽だ。
声をかけられたとしても、菫じゃなくてあたしが呼び止められてるんだもん。
気分いいよね。
今の彼氏の蓮だって、菫じゃなくてあたしをみてる。
それだけがすごく嬉しい。
あたしはやっと、『菫と同じ顔の人』じゃなくて『薫』っていうひとりの人間になれたんだから。
なのに、この春…菫の顔を知ってる人間があたしの学校へやってくる。
菫を知ってる人間と接触していい思いをしたことなんか一度だってない。
キャバクラの客として菫と接した奴となんか話したくもない。
かと言って『あんたが店であったのはあたしじゃない』って明かしてしまったら名門校に通う菫の立場が危うい。
その教師とあたしが遠い関係になることを祈るしかなかった。
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