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――――――
お母さんは、押し入れから古びた赤色のアルバムを持ってきた。
「ほら!」
お母さんは、アルバムを裕次に見せる。
表紙には○×中学校卒業アルバムと書かれている。
お母さんは床に座りそれを広げた。
裕次も床に座り込む。
裕次は好奇心でいっぱいだった。
あの○×中学校にやっとたどりつけたのだから。
「確か…あの子達は3年C組やったかな…。」
そうぼやきながらパラパラとアルバムをめくって行く。
3年A組を通り越し、3年B組を通り越し、そして、とうとう3年C組のページになる。
そのページは37人の写真で埋まっていた。
全員、笑顔で笑っていた。
どこのクラスもC組と同じように笑っているのに、C組だけはどこか雰囲気が違う気がした。
そう思った途端急に悲しいという感情に襲われた。
「この子達も、後1年生きてたらこんな形で卒業せえへんかったのに…」
お母さんは呟く。
そして、互いに無言になる。
しばらくの沈黙の後お母さんが一人の少年を指差した。
「この子が生き残りの子。」
俺は、その少年を見る。
……望月 礼か。
焦げ茶の長髪。
見た目は、零にそっくりや。
礼、零。名前も同じ。
その時、俺はある事を思い出した。
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