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「冷蔵庫の中で、一種のホルマリン付けの状態になっていました。」
固まっている三人に米沢が言う。
冷蔵庫には確かに、薄い緑の液体に満たされていた。
「じゃぁ、エンバーミングが施されてたわけじゃ…。」
芹沢が苦し紛れに言った。
「まだ何とも言えませんが、この状態を見ると恐らく…。」
米沢が寂しげに答える。
「この花…、クロユリだよな?」
三浦が花を取る。
「えぇ。クロユリに間違いないかと…。」
三浦が取った花は、少し萎れていた。
黙ったまま険しい表情で伊丹は、その花を見つめていた。
「先輩…。大丈夫ですか?」
芹沢が恐る恐る伊丹に声を掛ける。
「違う…、」
「は?」
それは、小さい声であったが、周りの捜査員も振り向く程強い口調だった。
「違う…。あいつの仕業じゃねぇ。」
「確かに、似た手口ではありますが、死後の経過も解剖待ちになりますので…。」
米沢は、その真直ぐな口調につい応援を加えた。
「だよな。模倣犯の可能性も充分にある。」
三浦が続いて、言う。
そうであって欲しいと四人は、思った。
更なる哀しい結末を迎える事を考えたくは無かった。
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