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よく晴れた五月の空、北海道の春は肌寒く陽が眩しい。
朝寝坊の美空(みく)が起きたのは、大きなトラックの音が聞こえてきたからだった。
空き家になって久しい隣の家に誰かがやってきたのかもしれない。
隣の家は何故か人が長く住む事は無かった。どんなに明るい家族が入ってもみんな青白い顔になって二年もしないうちに出ていってしまう。
大人は誰も教えてくれないが、小学生の間ではお化け屋敷として有名だった。
大急ぎで服を着て、一階の居間に声を掛ける。
『お母さん!引っ越し?どんな人?』
『美空!挨拶に来るまで待ちなさい!』
母親が止めるのも聞かずに美空は階段を駆け下り、玄関を飛び出した。
隣家に目をやると、大きなトラックの陰から引っ越しのお兄さんに交じって自分と同じくらいの男の子を見つける。
喜びのあまり美空は躊躇することなく近寄り、気さくに声を掛けた。
『名前は?』
『ええっと…』
男の子は困っているようだ。だがこんな事では美空の好奇心は怖じけない。
『あたし梨谷 美空(なしたに みく)!隣に住んでるの。ちなみに三年生!』
『ぼ…僕は鈴木 宇宙(すずき そら)…さ…三年生…』
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