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「さち子危ないって!母ちゃんに小さいの一本持っていくだけだから。ほら今日、母ちゃん誕生日だろ?」
「さち子は?さち子も何も無いよ?」
「さち子は花冠!僕は桜!ほら一緒だろ?」
「本当?」
「ああ本当だ。ほら折れた!小さい枝だろ?さち子の花冠と同じ大きさだ。待ってろ!今降りるからな!」
「うん。さち子待ってる。危ないからゆっくり降りてきてね。」
僕は慌てていた。さち子はあまり長い間、同じ所にいる事が出来なかった。
さち子は安心してしまうと興味が薄れ、何か違う物に夢中になり、何処かに行ってしまう。
さち子はまだ小さな子供だった。
だから、だから…さち子が桜の木の下にいるのに、僕が座っていた所は不安定だったのに…
「キャァァァア!!!」
誰も悪く無いって慰めてくれる人はいっぱいいたけど、僕が悪いと責めてくれる優しい人はいなかった。
《僕がさち子を潰して殺した。》
それは変わらない事実だった…。
僕への衝撃は打撲程度だった。さち子がクッションになって僕は助かった。
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