桜階段2

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ここから先は、母が亡くなる直前に教えてくれた事だ。 桜の下の階段は、さち子の血で赤く鮮明に染まっていて、母さんは悲しいとか思う前に綺麗って感じたらしい。 その時、神様が罰を与えるように落雷を鳴り響かせた。 最初に僕たちを見付けたのは母さんで、母さんは雨がぽつぽつ降り始めた中、気絶した僕を連れ、父さんの元に走った。 父さんと母さんは僕を家の中に寝かし、桜階段に戻り、豪雨の中さち子を桜の木の下に埋め、何も無かったように涼しい顔して家路に着いた。 あの時はみんなどうかしていたんだ。 階段に広がった血液は雨が流してくれた。 今のように血液反応が分かる訳でも無くて、人があまり通らない小道だった事もあり、誰もさち子に気がつかなかった。 母さんと父さんは近所の人に、さち子が病気で遠くの病院に入院したから家族全員で引っ越す事になったと説明し、土地を手放し、まだ呆然としている僕を連れて新しい土地に引っ越した。 僕は毎日、お前は一人っ子だ。大切な跡取りだと言い聞かされた。 僕の心は用意してもらった逃げ道を、抵抗する事も無く歩み始めた。
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