じゃんけんさん

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娘によるとじゃんけんさんは会ったら最後、大変な事になるらしい。ただどんな大変な事なのかは誰も知らないと言う。 四歳児の考えそうな穴だらけの嘘だった。 お菓子を買って貰えないと飴さんが怒ってるだの、おもちゃを買って貰えないとワンワンに吠えられるだのいつもくだらない。 幼稚園の先生に聞いたら、りんはとてもいい子で、そんな嘘はつかれた事が無いと言うし。どうやら私を試しているようだった。 嘘をつく理由はママに注目されたい。そんなところだろう。 分かっていても私にはどうする事も出来なかった。娘には早く自立して貰いたい。これが本音だ。 子供は産んだからには育てる。常識は守るつもりだったが、どうしてもべったり可愛いがる事が出来なかった。 可哀想だという自覚もあって、なるべく会話を試みているが、最近は嘘をつかれてしまう。 私には娘が理解出来なかった。 『…行ってきます。』 りんは諦めたようだ。うなだれたまま玄関を出ていった。 私は声を出せないでいた。口を開けば娘を傷つける。そんな気がしたのだ。
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