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娘が幼稚園と習い事をしている間、私はパートに出ていた。
子供と接しなくても、子供の事を考えて行動しなくても良い時間。私には貴重な逃げ場所だった。
娘にも世間一般にも良い母を演じていると息が詰まりそうになる。自分でストレスを溜めるタイプなのは分かっていた。
六時頃、パートを終えて家に帰ると、りんがリビングで声を殺して泣いているのが玄関先まで聞こえてきた。
何かあったのかと私が慌ててりんの元に駆け寄ると、りんの顔には無数の青痣が広がっていた。
『りんちゃんどうしたの?』
私は娘の肩を揺すって問いただそうする。誰がやったのかそれが知りたかった。
『…今日…ピアノのレッスンに行く途中で…』
急に喋らなくなる。うつ向いて口を固く閉じてしまった。
『りんちゃん。ママに話して頂戴。ママはりんちゃんの味方だから、りんちゃんを虐めた人が知りたいの。大丈夫。ママが二度とそんな事させないから。ね?』
『………じゃんけんさん…』
『えっ?』
『昨日じゃんけんさんに会ったの!じゃんけんして負けたから約束したの!嘘つきって言われたら…』
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