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「あぁもう!話し通じねぇな。いいか良く聞けよ?俺んち今大変なんだよ。父ちゃんが変になったんだ。母ちゃんはそのせいで毎日泣いてる。面倒くさいが俺が笑顔に…」
『ほんと…』
女の子は笑顔になった。
「あぁ…って笑う話しか?お前実は信じて無いだろ?」
『うん。さち子待ってる。危ないからゆっくり降りてね…』
「だ・か・ら!まだ登ってもいねぇし、止めるつもりもねぇ!」
何を話しても無駄みたいだった。もう知るか勝手に泣きやがれ。俺は目の前の桜に用事があるんだ。構わず女の子を尻目に登り始めた。
『キャァ…』
悲鳴が聞こえて思わず足が滑る。ドスンと尻餅をついてしまった。
何事かと慌てて振り返るが、女の子の姿が無い。奇妙に思いあちこちを探し回ったが姿は見つからなかった。
「なんだあいつ。変な奴…。」
お尻の砂を払い、今日のところは帰る事にした。尻が痛くて登れそうにないのだ。
確かにあの桜は危ないかもしれない。下の階段が思いの外に固かった。
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