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『誰かいますか?入りますよ!』
男の人の声が聞こえてきた。続いて数人の足音が床を振動させる。
りんは急にハサミを離し、横たわるようにして倒れた。とっさに体を揺らして反応を確かめると、小さな寝息が聞こえてくる。
『うわぁ!!!』
男の人の悲鳴が部屋の中に反響した。
その声で我に返ると、グシャグシャに切断されかけた人差し指が痛みだし、思わず指を押さえ声にならない声を出す。
『落ち着いて下さい!お腹を痛めて産んだお子さんですよ?』
救急隊員と思われる男達は私を警戒しながら娘をストレッチャーに乗せ、運び出した。
『今、二台目の救急車を呼びますから、取りあえず応急手当をさせて下さい!』
私の近くにあった裁断ハサミを蹴り、遠くにやった後、二人がかりで押さえ付けて私の指の状態を調べていく。
『何故!?娘と一緒じゃないんですか!?』
私は当たり前の質問をした。男達は顔を見合わせ、私を更に押さえ付けてくる。
『お母さん、落ち着いて下さい。貴方を今、娘さんに合わせる訳にはいきません。まず、私達に何故あんな事をしたのか理由を話して下さい…』
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