じゃんけんさん

10/22
前へ
/59ページ
次へ
私は一瞬にして何かを悟った。部屋を見回しても、りんの怪我の様子を見ても、私がやったとしか思えない状況だ。 私は言い訳も言えないまま、あまりの事に気を失ってしまった。 …目を開くとそこは真っ白な世界だった。 慌てて瞬きを繰り返す。 私は今、病室にいるようだ。起き上がろうとすると手足に違和感を感じる。 布団があって分からないが私の手足は拘束されているらしい。 なんとか抜け出そうと体を捻ったり、口を使って布団を捲ろうと頑張るが上手くはいかなかった。 …しばらくするとノックの音が聞こえてきた。 『入るよ。』 知らない声だ。 『落ち着きなさい。』 顔立ちの怖い男が優しい声を出している。 『…誰?』 私は自分の声で、りんの事を思い出した。…じゃんけんさん… 『失礼。私は警察の者です。…りんちゃんの事でお聞きしたい事が有りまして。』 私はドキッとした。あの状況下、私が虐待していないという証拠は無い。 『…りんは…りんちゃんは無事ですか?』 私は慎重に言葉を選んだ。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加