じゃんけんさん

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『奥さん!貴方の旦那さんを見たと何人も通報された方がいるんですよ!』 衝撃的だった。いないはずのあの人を見たなんて嘘も過ぎる。私は近所で嫌われている? 『…あくまで認めないんですね…じゃんけんさん…まったく親子でくだらない嘘をついて!』 警察は大きく溜め息を吐いた。私は嘘などついていない。娘と目の前の男がおかしいのだ。 だが置かれた状況が状況だけに、自分が正しい自信も消えかけていた。手足を拘束して上から目線で話すなど卑怯極まりない。これでは私が悪いみたいだ。 『いいですか?警察は必ず旦那さんを見つけてみせます。…殺人容疑でね。』 『殺人!?』 あの人では無い。あの人のはずが無い。あの人は… 『りんちゃんが病院に着く前に救急車の中で息を引き取りました。』 警察が淡々と話す。 『…だって!りんがじゃんけんさんって…嘘をついていたと言ったのは貴方じゃないですか!』 私は拘束された手足を出来るだけ動かした。りんが、私の娘が私を残して死んでしまうはずが無い。
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