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「ただいま~!」
なるべく元気よく家に入る。俺だけでも元気じゃないと気が変になりそうだ。
「お帰りなさい。…あのね…お引っ越ししないといけなくなったの…前田のばぁちゃん家。海留好きだったわよね?ばぁちゃん。母ちゃんと一緒にお部屋お片付けしましょうね…。」
「母ちゃん…父ちゃんはどこ?父ちゃんも行くの?」
「父ちゃんはね…行けないの…母ちゃんも悲しいけど二人で生きて行かなきゃいけないのよ。」
「父ちゃん!父ちゃん!」
止める母ちゃんを押し退けて、家の中を探し回る。父ちゃんは居間にいた。何もついていないTVを見て笑っている。
「父ちゃん!元に戻ってよ!ねぇ!母ちゃんに捨てられそうなんだ!俺、前の父ちゃん好きだった…ねぇ父ちゃん…お願い…」
涙が出てしまい上手く話せない。それでも父ちゃんは電源の入っていないTVから目を話そうとはしなかった。
『見ろよこれ面白いぞ…』
その態度に腹が立って誕生日に買ってもらったラジコンカーを画面に投げつける。
少しヒビが入った。母ちゃんは泣きながら暴れる俺を抱きしめ
「そこに父ちゃんはいない。」
と冷たく言い放つ。
「父ちゃんを見捨てるのかよ…。」
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