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男は帰っていった。
『拘束を外しなさい。』
先生が看護師に声をかけた。ゆっくりと体が解放されていく。少し痺れているのかすぐに起き上がる事は出来なかった。
私を信じてくれたのか、診察の為かは分からなかったが、それでも解放感は素晴らしい。私は体を少しづつ動かし、頭を整理した。
『そのままでいい。今から聞く事に正直に答えて欲しい。君はりんちゃんを虐待していないんだね?』
先生の言葉に私は大きく頷いた。
『私は私の患者を信じたい。じゃないと的確な診察は不可能だからね。僕はエスパーじゃないし、話してくれなきゃ分からない。』
私は何度も頷き、意思を示した。
『先生!りんは?りんはどこにいるの!?』
私はベッドから降りて先生にしがみついてしまった。りんの生存が知りたい。
『落ち着いて下さい。私には分からないのです。りんちゃんと君は別々の病院に運ばれたのです。』
私はショックを隠せなかった。あの男だけでは無い。救急隊員も私を疑っていたのだ。もしかしたら先生も?…もう誰かを信じるのは止めておいた方がいいかもしれない。私以外私の敵に見えた。
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