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ほとんど無意識に右手を振り上げ、狙いを定めて下ろした。小さな遺体は意外な抵抗を見せる。
意地になってもう一度めいいっぱい振り上げ、スコップの先を突きたてる。
首が取れた。
俺は周りを気にしながら何も無かったように、雀を埋め、割り箸を立て、手を合わせる。
職場に戻り、普通に雑務をこなしていくが、心の中には淡い高揚感が渦巻いていた。
その日を境に雀の遺体を探しながら歩く癖がついた。
雀の遺体なんて、そうそう見つかる訳も無く、あの日から一週間がたとうとしていた。
我慢出来ない。心の声が口から出そうになる。俺は意を決して雀の遺体を作る事にする。
幸いにも雀は腐るほど身近にいた。…だが、捕まえるには人目を気にしなくてはいけない。
遺体から発せられる腐敗臭も気になった。あまり多く同じ所に埋めるべきでは無いかもしれない。
色々と頭を悩ませる。何故だかそれだけで生きている実感が湧いてきた。俺に足りなかった物は、ほんのちょっと人の道を外れる事だったのだろう。胸がときめいた。
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