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その日は小雨が降り注いでいた。
仕事で自転車を走らせていると、小さな小道に散りかけた桜が見えた。いつもなら見逃したであろうその桜は何故だか今夜は近寄らなければいけない雰囲気を醸し出している。
桜が散りばめられた階段は、雨による泥水が気にならないくらいに美しかった。
裸に近い桜の木を見上げながら近寄ると足元で何かを砕く。
足をよけてみると、白い何かが土から突き出していた。
しゃがんで引き抜いてみる。
形状が人間の骨に似ていた……俺は夢中で素手のまま土をかきだした。怖いよりも知りたい、見たいと心が踊る。
骨にはあまり詳しくは無いが、出てきた白骨の形状、数を考えれば子供の遺体に見える。
崩れかけた小さな赤いスカートと白かったであろうブラウスも一緒に出てきた。
女の子…
俺は辺りを見回して、雀の代わりにその骨を素手で砕く。とにかく砕けるだけ砕いた。
素手だと対して砕け無かったが、ずっと胸の中にあったモヤモヤが消えていくのが分かった。
俺は骨を元の場所に埋めなおして、決して誰も気付けないように土を必要以上に踏みつけた。
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