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「意味には諸説あるわ。『私と君は敵同士になってしまったが、我々の絆は絶えない。再び盃を交わす日を、遥か遠方の地で待とう』という意味だとする説が一つ」
少年は頷く。意味合い的には通じるし、話を聞いて抱いたスレイヴの人物像にも合致する。
少女は彼の反応を見つつ、続きを話し始めた。
「別の説ね。『明日になれば、君はもう敵である。私は、戦場で君とまみえる時を待とう』」
「それは違うよ。スレイヴ将軍は、レードリーとの関係をとても大切にしていたんだ。本意ではない裏切りで、それを簡単に断ち切るとは思えない」
無意識のうちに動いた口から紡がれた言葉に、少年は一瞬茫然とした。特に何かを喋ろうと思って喋った訳ではない。
しかし、何故かこの言葉を口にしなければいけないような、無意識の衝動によってそんな事を口走ってしまったのだ。
当然、少女もぽかんとする。
「……なんか、スレイヴ将軍本人を知ってるみたいな口振りね」
「知らないよ。……いや、知っ……てる?」
不気味な違和感に、少年は目を見開く。彼らの戦いを間近で見たような既視感が、深層心理に何故か根付いていたのだ。
夢で見たように漠然としているにもかかわらず、目の前で見たかのように鮮烈に記憶に焼き付くその情景に、彼は不気味さを禁じ得なかった。
「知らないはずなのに……なんでだろう。何かを思い出しそうな気がする……」
「……ねえ。説はもう一つあるんだけど、聞く?」
自身に芽生えた既視感に戸惑いつつ、彼は頷いた。記憶の切れ端を掴んだ事で、何を話していたのか忘れてしまっていたらしい。
少女は、彼が現実世界に戻ってきた事を確認してから、再び口を開いた。
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