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「『戦争が終わった未来のレクリースに、私はもういないだろう。平和なレクリースを治める君を、私は遥か遠方から見守ろう。運命が再び、二人を引き寄せる事を信じて』――。この説も有力よ。事実、レクリース王がレードリーの反乱で殺された後、スレイヴ将軍は姿を消しているから」
少年は唸る。やはりこれも、どこか友情を軽んじているように取れる部分もある。
しかし少年には、真実はこれだ、という不思議なほどの確信があった。
「とまあ、説は幾つかあるんだけど、何でいきなりそんな事を言ったのよ?」
「ここに来てから聞いたんだ。男の人から」
「どんな人?」
少女の問いに答えようと、少年はほとんど空っぽになっている記憶の中から、その記憶を引きずり出そうと考え込み始める。
が、すぐに諦めたのか、大きな溜め息を吐いた。
「顔は分からない。でも、この街は素晴らしい、って言ってた。争いのない、平和な世界だって」
「争いのない平和な世界……ねえ。争いがない事と平和はイコールじゃないのにね」
この『素晴らしい世界』の現状を知る少女もまた、大きく溜め息を吐いた。
そして、彼女は何やら思案するような動作を見せた後、唇を開く。
「多分、『遥か雲の彼方』っていうのは天龍の塔の事よ。頂上は雲より上にある、って聞いた事があるわ」
彼女の言葉で、目的地はすぐに決定した。
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