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天へ昇る龍のように、まっすぐ空に伸びる黒い塔。少女にそれを指で示された少年は、首を真上に向けた。
「高いね」
「もちろんよ。雲の上まで続いてるんだから」
無邪気に天を仰ぐ彼に向け、少女は語りかけながら同じようにする。
雲をも突き抜けるようにそびえ立つ塔は、威圧感と神々しさに満ちていた。
「多分、この上よ。行きましょ」
「うん」
扉などない、ただ広がる塔の入口へ二人は踏み込んでゆく。彼らが入口を潜った瞬間、その視界を眩い光が覆った。
今まで見たどんな光よりも明るく、美しく、透明な光だ。
「さすが、光の街の中枢ね。凄まじく居心地が悪いわ」
「ここが、皆から感情を奪ってるの?」
少年の問いに、少女はさあ、と肩を竦めただけだ。ただ、その態度にはある種の確信が見て取れた。
情報がないだけで、彼女の感覚からすれば、ここは間違いなく『諸悪の根源』なのだろう。
「この上に、その男がいるのかしらね」
「……行こう」
少年は、何の躊躇いもなく塔の中へと踏み込み、頂上の見えない階段を昇り始めた。
少女もそれに続く。
「ようこそ、光の塔へ。ここは世界平和への階段、その第一歩だ」
その時響いた声は、間違いなくあの男の声だった。
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