―夜間の闘―

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その後、しばらくして食事の時間となり、灯は健太の家族と共に御飯を食べた。 現村主である健太の父――絆蔵(ばんぞう)は嬉しそうに灯を迎え、旅の話を乞おたり、村の事や家族の事を話した。 健太の家族は祖父、祖母、父、母、姉、健太、妹の七人家族。 親切で明るく、皆終始温かい笑顔で、灯も心地良かった。 酒を勧められ、祖父、父と共に話を肴に飲んだ。 「おや、もう結構経ってしまいましたなぁ。そろそろ休みますかな」 絆蔵は陽気に笑って、灯を部屋に送ろうとした。 だが灯はそれを丁寧に断って、己の部屋に戻って行った。 「さて、まだ時間はあるし寝るかねぇ」 そう言いほろ酔い気分で布団を敷いた。 すると、また健太が戸を叩きもせず、 「灯ー!」 と、ズカズカ入って来た。 灯は溜め息をついた。 「あんたは本当に礼儀を知らないんだねぇ・・・」 「そんなことより長かったなぁ。俺風呂入っちまったぞ」 健太は先に会った時とは違い、寝間着の格好であった。 どうやら風呂を勧めにきたらしい。 しかし灯は、 「風呂は遠慮しとくよ」 と、また意味深な笑みをしてみせた。 健太は?を頭の上に浮かべながら、暫く灯と会話をして部屋を出ていった。 健太は部屋に帰る道で、結局灯は始終鞘を抜かずにいた事を奇妙に思った。 これから行われるであろう死闘に巻き込まれる事を知ることもなく――。
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