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結局その後健太は、追いついて来た大根を持った女にこっぴどく叱られた。
「ったく、あんたのせいで叱られちまったじゃねぇか!」
健太はその帰り道で、横を歩いている笠を被った女に愚痴を溢していた。
「あんたが突っ込んで来るのが悪いさね」
女は気にした風もなく、またカカッと笑った。
「別に止まれたっての!」
健太はそう言うと、プリプリと顔を真っ赤にしながら、女より早足で前を進んだ。
「カカカ・・・。威勢もいい餓鬼だねぇ」
その言葉に健太はまた怒りを覚え、
「餓鬼じゃねぇ!俺には健太っつう名前があんだよ!」
振り返って、そう叫んだ。
女はさも愉快そうに、
「おやそうかね。悪かったね」
と軽く流した。
「そう言や、まだあたいの名ぁを言ってなかったね」
女は笑いを止め、思い出したように言った。
「そういやそうだ。俺は名乗ったのにあんたは名乗ってねぇ」
健太も思い出したように言い、早く教えろ言わんばかりに急かした。
「あたいん名前は・・・」
と女が名乗ろうとした時。
「健太ぁー!!」
目の前に居る女とは違うどすのきいた女の声と共に、健太の後頭部にがぁんという鈍い衝撃が響いた。
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