―刀の鞘を持つ女―

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「そだ、ちょいと良いかい?」 女の物言いに、健太の母親は「何ですか?」と返した。 ちゃっかり逃げようとしていた健太の首根っこを掴みながら。 「此処いらに宿屋はないかい?こんな山ん中じゃ、泊まる場所がなくてねぇ」 そう言うと、健太の母親は困ったように、 「生憎この村に、そういったものはないんですよ」 と、辺りをきょろきょろしながら答えた。 「そりゃあ困ったねぇ。じゃあ空き家とか馬小屋でも良いんだけどねぇ?」 「それでしたら、うちに来て下さいな」 女の問いに健太の母親は、自分の家を提供してみせた。 「おや、そいつは嬉しいねぇ。良いのかい?」 「ええ、もちろん。健太の件もありますしね」 その母親の言葉に、健太は「何もしていない」という顔をしながら振り返ったが、あえなく一蹴されてしまった。
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